技能実習から特定技能への移行!対象職種や方法について解説
2024年08月16日
技能実習生は実習期間が終了すると帰国しなければならない。
以前はこのようなルールでした。
しかし今では、技能実習から特定技能に移行すれば、日本に引き続き滞在し、仕事を続けることができます。
技能実習と特定技能とは
技能実習も特定技能も、外国人の就労が可能となる在留資格です。
共通点は、当該外国人の専門的・技術的知識や経験が比較的少なくても対象になることです。
技能実習とは
技能実習はもともと国際社会の人材育成と、日本による発展途上国に対する国際協力のために作られた制度です。外国人に日本の技術や知識を学んでもらい、その技術や知識を本国で活用してもらうことが目的です。
特定技能とは
特定技能は、日本国内の、十分な人材確保が困難な14産業分野に外国人を受け入れることで人材確保するための制度です。少子高齢化が加速し、3Kと呼ばれる産業を若者が敬遠する傾向がある我が国では、生産性向上や国内人材確保の努力をしても厳しい状況があります。そのため、受け入れる外国人は、一定の専門性・技能を有し即戦力となる人物であることが条件になります。
技能実習と特定技能の違い
技能実習と特定技能には様々な違いがありますので、紹介します。
制度の目的
技能実習が技術伝達によって途上国の技術向上に協力するという国際協力を指針としているのに対し、特定技能は日本における労働力不足を補うことが目的です。
これが最も大きな違いです。
そのため、特定技能では技能実習よりも多くの業務に携わることが許可されています。
また受け入れの時点で必要な能力も特定技能の方が高いです。
そのため、特定技能では即戦力として働いてもらうことを期待しています。
在留期間が異なる
技能実習と特定技能では許可される在留期間も異なります。
技能実習で1号から3号までスムーズに移行できた場合、最長で5年間日本にいることができます。
移行が順調にできなければ、もっと短期で終わります。
一方、特定技能は1号で通算5年で、2号では在留期間の上限自体がありません。
対象国
技能実習の対象になっているのは、16の新興国です。
特定技能は原則すべての国が対象とされています。
ただし、実際に特定技能資格を取得できている人の国籍は限定的です。
なぜならば、受け入れに関して送り出し国との間でトラブルが起こらないよう協定を結んでいる国から受け入れるケースがほとんどだからです。
なお、イランとトルコは他国から帰国の命令をされた自国民を入国不可にするため、この2国籍の外国人は特定技能の対象国から除外されています。
その他の違い
就業可能な業務・業種
受入れ方法
転職・転職是非:技能実習は転籍・転職できませんが、特定技能は転籍・転職可能です。
技能水準試験の有無:技能実習受け入れ時には技能水準や日本語能力水準の試験がありませんが、特定技能の場合、1号2号ともに特定産業分野に関する技能水準試験があります。
日本語能力:特定技能には日本語試験があります。
技能実習から特定技能への移行について
「技能実習」から「特定技能」への移行は、可能です。
しかし要件を満たす必要があります。
なお技能実習1号から特定技能へ移行することはできません。
そして技能実習3号の場合は、実習計画を満了する必要があります。
一般的に技能実習から特定技能への移行と言う場合、技能実習2号から特定技能1号への移行を指していると考えてください。
また、特定技能は転籍・転職が可能ですから、技能実習時とは別の企業で働けることもポイントです。
技能実習から特定技能に移行できる分野
移行可能な特定技能の分野は次の分野です。
農業
漁業
建設
食品製造
繊維・衣服
機械・金属
家具製作
印刷
製本
(強化)プラスチック成形
塗装
溶接
工業包装
紙器・段ボール箱製造
陶磁器工業製品製造
自動車整備
ビルクリーニング
介護
リネンサプライ
コンクリート製品製造
宿泊
RPF製造
鉄道施設保守整備
ゴム製品製造
鉄道車両整備
空港グランドハンドリング
ボイラーメンテナンス
移行対象職種の詳細および条件については、JITCO(国際人材協力機構)のウェブサイト(JITCO 技能実習制度の職種・作業についてhttps://www.jitco.or.jp/ja/regulation/occupation.html)で確認してください。
技能実習から特定技能への移行手続きの流れ
「技能実習2号」を持つ外国人を「特定技能」へ移行させる手続きについて解説します。
移行手続きの基本的な流れは次のとおりです。
-特定技能外国人と雇用契約締結
-1号特定技能外国人支援計画策定、または登録支援機関と委託契約締結
-事前ガイダンスの実施、健康診断の受診
-分野や国によっては追加の手続きや上乗せ要件があるため行う
-在留資格変更許可申請を出入国在留管理庁に提出
上乗せ要件が無い場合、申請から約2〜3か月で結果がきます。
技能実習から特定技能に変更するための手続きに必要な書類
技能実習から特定技能に変更するためには、どのような手続き書類が必要なのでしょうか。
-特定技能外国人の在留諸申請に係る提出書類一覧、確認表
-在留資格変更許可申請書
-写真(縦4㎝×横3㎝)
-身分証明書(申請取次者証明書、戸籍謄本など)
-特定技能外国人の報酬に関する説明書
-特定技能雇用契約書の写し
-雇用の経緯に係る説明書
-申請人のパスポートおよび在留カードの提示など
国や分野ごとの上乗せ要件
通常は申請から1〜2ヶ月で審査結果が通知されます。
しかし国や分野によって、上記の書類に加えて、要件が追加されることがあります。
そのような場合は、通常よりもさらに準備や手続きに時間がかかります。
余裕をもって早めに準備に取り掛かるようにしましょう。
国ごとの要件の例
本国で許可や手続きが必要なケースがあります。(出入国在留管理庁|二国間協定での本国において必要な手続)
例としてネパールとベトナムを挙げましょう。
ネパールの場合は、本人が海外労働許可証の発行をネパール政府に対してオンラインで申請を行い、取得してから出国しなければなりません。
またベトナムは、現在日本で多くの労働者を受け入れている代表的な国ですが、次のような追加要件があります。
ベトナム人が特定技能に移行するには、オンラインで事前申請を行い、日本のベトナム大使館で推薦者表を得る必要があります。
この煩雑な手続きに加え、特定技能外国人を受け入れるための社内制度の整備や必要書類の準備もあります。
したがって、準備期間に3カ月~4カ月はかかると考えると良いでしょう。
分野による追加要件の例
例えば建設業は、次のような追加要件を課せられています。
-報酬などを記載した「建設特定技能受入計画」について、国交省の認定を受ける
-外国人の受入れに関する建設業者団体に所属する
-特定技能外国人を建設キャリアアップシステムに登録する
基本の出入在留管理庁への申請に加え、国交省にも申請や届けを行うことになり、その分手間と費用がかかります
移行申請前に在留期限が切れてしまう場合の特例措置
「特定技能1号」に移行したいが、現在の在留資格の在留期間満了日までに書類がそろわないなど間に合わないことがあります。
このような場合、「特定技能1号」資格で就労予定の受入れ先で就労しながら移行のための準備を行える「特定活動(4か月)」という在留資格があります。
この特例措置を受けるには、以下の条件があります。
-在留資格変更許可申請を予定していること
-申請人の在留期間の満了日までに「特定技能1号」への在留資格変更許可申請を行うことが困難である合理的な理由があること。
-申請人が「特定技能1号」で従事する予定業務に従事すること。
-技能実習と特定技能との業務が同様であること
-申請人が「特定技能」となった際に支払われる予定報酬額が支払われること。
-日本人が従事する場合と同等以上の報酬を支払うこと
-申請人が技能実習2号良好修了者であること。
-技能試験および日本語試験に合格していること
-受入機関が在留外国人の日常生活の支援を行うこと
技能実習から特定技能への移行のメリット
技能実習から特定技能へ移行することに伴う受け入れ企業のメリットとデメリットをしっかりと理解しておく必要があります。
まず、メリットからお話ししましょう。
特定技能へ移行すると、受け入れ側の企業には次のような大きなメリットがあります。
-引き続き日本で働いてもらえる
-人数制限がなくなる(介護・建設除く)
移行対象となっている産業分野では、絶えず人材不足に悩んでいます。
そのため、同じ会社で3年、5年と働き続けてくれる人材は貴重です。
また日本の生活や会社の業務に慣れた技能実習生の中には、もっと働きたいのに帰国せざるを得ないケースもあります。
企業にとっても、手放すのが惜しい人材となっています。
そんな技能実習生を特定技能に移行すれば、既に育成済みの自社の人材にさらに最長5年働いてもらえるのです。
人材確保に費やす費用、時間、労力などを考えれば、これは企業にとって大きなメリットだといえます。
要件の免除
-技能実習2号を良好に修了していること
-技能実習の職種・作業内容と、特定技能1号の業務に関連性が認められること
技能実習を良好に3年間終了し(2号まで)、職種と作業内容が移行する特定技能1号の業務に関連性が認められる場合、技能試験と日本語試験が免除となります。
技能実習と異なる業務であっても、技能実習2号を良好に修了した場合は日本語試験が免除されます。
技能実習から特定技能への移行のデメリットや注意するべき点
技能実習から特定技能への移行に伴うデメリットや注意するべき点についても、解説します。
賃金面
まず特定技能の非メリットとして挙げられるのは賃金面のコストです。
特定技能については次の決まりがあります。
-同等の業務に従事する日本人労働者の報酬の額と同等以上であること
-技能実習の一段階上の在留資格なので、3年または5年程度の経験者として取り扱うこと
技能実習の賃金より高くなることは必然です。
手続き面
また受け入れ先の企業には、入管庁に対する雇用契約の変更や終了時に随時の届出と、年4回の定期の活動状況届出が義務として課せられています。
これらの届出を行わないと罰則対象となるので注意が必要です。
外国人労働者の離職リスク
さらに特定技能は転籍・転職が可能なので、外国人労働者から「選ばれる」職場でなければ離職を招きます。
この点を軽く考える企業が存在しますが、働き続けてもらうにはやはり受け入れ側の配慮も大切です。
技能実習から特定技能に移行すると、さらに5年、10年と家族に会えず異国の地で独り頑張らないといけなくなる外国人労働者の立場を考えて受け入れたいものです。
技能実習から特定技能の移行 まとめ
技能実習から特定技能への移行は、人手不足に悩む企業にとり、歓迎すべき制度です。
これからさらに活用されていくでしょう。
しかしどのような制度もそうですが、メリットばかりではありません。
特定技能へ移行すると、転籍・転職可能となるため、職場環境や労働条件が悪ければ離職されてしまいます。
これからの企業には、外国人労働者と各制度への深い理解や十分なサポート体制が必要となるでしょう。
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