【帰化】とは?外国人の日本国籍取得:帰化申請の流れと注意点
2023年07月18日
近年、毎年約1,000人弱の外国人が日本に帰化(きか)しています。
帰化は、外国人が日本国籍を取得することで、外国人労働者やグローバルな人材を取り入れる一つの手段として注目されています。
企業にとって、帰化した外国人は、外国人ならではの能力や技能、文化背景を持つグローバル人材として貴重な存在です。
この記事では、帰化の意味やメリット・デメリット、さらには具体的な申請手続きまで解説し、企業が帰化した外国人材を有効活用するためのヒントを提供します。
帰化とは
帰化とは、外国人が、法務大臣の権限により許可を得て、日本国籍を取得することをさします。
日本では二重国籍が禁止されているので、帰化した外国人は、元々持っていた外国籍(母国の国籍)を失います。帰化した外国人は、日本国籍を取得することで、日本人と同等の身分・地位を取得します。
また、在留資格を取得して滞在する外国人のように就労の制限などの活動の制限がありません。
企業が帰化した外国人を採用するメリット
企業にとって、帰化した外国人を採用することは、さまざまなメリットがあります。以下にその主なメリットを紹介します。
長期的に雇用できる
帰化した外国人は、在留資格を得て日本に滞在している外国人と異なり、在留期間がありません。
そのためそのため、在留資格の更新が不許可になどの原因で母国に帰国してしまう可能性がありません。
就労制限がなく様々な業務を任せることができる
就労系の在留資格には、特定の範囲内での活動のみが許され、活動に制限があります。
帰化した場合には、日本人と同等に活動することができ、肉体労働などの単純労働や、配属転換も可能ですし、正社員・パート・アルバイトなど様々な雇用形態で雇うことができます。
雇用に関する手続きが簡素化される
通常、外国人を雇う際には、ハローワークへの「外国人雇用状況届出」の提出義務などがありますが、帰化した外国人を雇用する際には、こういった「外国人」を雇用するための手続きは不要となります。
※社会保障など日本人を雇用する際と同様の手続きは必要です。
また、外国人採用時には必要となる在留期間の更新などの管理も不要となります。
外国人が帰化するメリット
外国人にとって、帰化することはどういったメリットがあるでしょうか。
日本人としての名前を持つことができる
帰化すると自由に日本人としての氏名を作ることができます。
外国人は、氏名が日本らしくないために差別を受けることがありますが、こういった差別を防ぐことに繋がります。
※名前は、漢字表記・カタカナ表記どちらでも作成することができます。
戸籍取得により家族が同じ戸籍になる
帰化すると、配偶者や子が日本人の場合に家族で同じ戸籍に入ることができるようになります。
帰化していない場合、外国人が日本人と結婚する際や出産などのタイミングには、領事館にいき手続きが必要となります。
日本国籍を取得することで、そういった手続きは、各自治体にある市役所などで手続きを行うことができるようになります。
日本の社会保障が受けられる
帰化していない外国人も一定の要件を満たす場合には、「労災保険」「雇用保険」「健康保険」「年金保険」の4つの社会保障に加入することが義務付けられていますが、帰化した場合にもすべての保障の対象となります。
日本の社会保障は世界の中でも手厚いため、日本の社会保障に加入することは大きなメリットとなるでしょう。
帰化せず母国等に帰国することになった場合、それまでに支払った社会保険料は「脱退一時金」として払い戻しを受けることができますが、満額は払い戻しされないため払い損が発生することになります。
日本のパスポートが取得できる
日本のパスポートは、ビザの取得なしで190カ国以上に入国することができ、他国のパスポートに比べ、海外渡航が容易になるケースが多いです。
また、外国人であれば一度日本国外にでた場合、再入国の自由が保証されておらず、長期間日本を離れる場合は在留期間内であっても再入国許可が必要となりますがこういった再入国に関する手続きも不要となります。
公務員として就職できる
外国籍を持つ外国人は、一部の公務員試験を除き公務員になることができず、また防衛関係の仕事などもできないといった制限があります。
この点についても、帰化をし、日本国籍を取得した場合には公務員試験を受験し公務員になることができ、職業選択の幅を広げることができます。
在留手続きや在留カード等の携帯義務がなくなる
日本国籍を取得することで在留期間の更新手続きが不要になり、また、中長期外国人であれば携帯義務のある公的身分証としての役割を持つ在留カードが携帯不要となります。
※帰化の証明は、戸籍謄本によりされます。
選挙権や被選挙権が得られる
基本的に選挙権・被選挙権は日本国籍の人に認められた権利のため、帰化していない外国人には認められないことが多いです。
帰化することで、18歳以上など一定の年齢になれば選挙権・被選挙権を得ることができます。
金融機関のローンが受けやすくなる
年収や経歴、素行などを国によって審査され帰化が許可されたということは、一定の社会的信用に繋がります。
このことから、金融機関のローン審査などが帰化しない場合に比べ通りやすくなり、住宅の購入などの検討もしやすくなるでしょう。
徴兵の義務がなくなる
国によって異なることもありますが、韓国をはじめ徴兵がある国の国籍を持つ外国人が日本帰化した場合、前の国籍で課せられていた徴兵の義務はなくなり、徴兵に行く必要がなくなる可能性があります。
外国人が帰化するデメリット・注意点
日本国籍を取得することでメリットも多い帰化ですが、母国の国籍ではなくなることで発生するデメリットや注意しなければならない点もあります。
ここでは代表的なものをいくつか解説します。
外国籍の再取得が困難となる可能性が高い
日本では国籍を複数持つことはできないため、日本国籍を取得すると元々の母国の国籍を失うことになります。
再度元の外国籍などを取得しようとする場合には、国籍付与の許可を取得することは困難になることが予想されます。
帰国する時はビザ(査証)が必要
母国に帰国する際には必要に応じ、ビザ等の手続きを取る必要があります。
この点は、メリットであげた通り、日本のパスポートがあれば多くの国にはビザなしで渡航が可能なためあまり大きなデメリットとはならないかもしれません。
母国での相続権を失う可能性がある
母国の家族法によりますが、母国での相続権が失われる場合があります。
事前に、母国の相続関係の法律・制度を確認する方がよいでしょう。
永住者と帰化の違いは
「永住者」とは、外国籍のまま、日本に長期間滞在することができる永住権をもつ外国人、その在留資格をさします。
「永住者」の概要は以下の通りです。
該当例:法務大臣から永住の許可を受けた者
在留期間:無期限(在留期間の更新手続き不要)
就労制限:就労制限なし
<帰化と永住者の共通点>
・就労制限がない
・基本的に更新手続き等なしで日本に長期滞在ができる
<帰化と永住者の違い>
・国籍: (帰化) 日本国籍 (永住者)外国籍
・配偶者・子供の国籍: (帰化) 日本国籍 (永住者)外国籍または日本国籍を選択
・公務員試験受験資格:(帰化)あり (永住者)なし
・選挙権・被選挙権の有無:(帰化)あり (永住者)なし
帰化に申請手続きについて
ここから帰化の申請手続きについて、帰化の種類ごとに要件や必要書類などを詳しく解説していきます。
帰化には3パターンある
帰化の方法には大きく3つパターンがあります。
■普通帰化
・18歳以上で5年以上日本に住んでいる外国人が行える
・日本人の配偶者がいるなどの繋がりがない外国人が行える
■簡易帰化
・日本人の配偶者がいるなど、一定の要件を満たしている外国人が行える
・簡易帰化では、18歳未満でも申請が可能
・要件の一部が緩和されるため、普通帰化に比べると帰化が認められやすい
■大帰化
・日本に対して特別の功労がある外国人が行える
・手続き上、国会の承認を得る必要がある
・この帰化が認められた前例は一件ない
多くの外国人は、普通帰化または簡易帰化を目指すことになるでしょう。
帰化の要件・必要書類
ここからはそれぞれのパターンの要件・必要書類を確認していきます。
■普通帰化
普通帰化で申請をする場合は、主に7つの要件があります。
①住居要件:引き続き5年以上日本に住所を有すること
5年のうち3年以上は就労した期間が含まれている必要があります。
▶︎注意点
目安ですが3ヶ月程度でも日本を離れると「引き続き」という要件はリセットされ、帰国後から改めて5年をカウントすることになります。
② 能力要件:18歳以上で本国法によって能力を有すること
③ 素行要件:素行が善良であること
具体的には、納税を行なっている、交通違反がないなどが挙げられます。
④生計要件:自己や配偶者など生計を営むことができる資金があること
目安ですが18~20万円/月程度あれば問題ないことが多いです。
⑤喪失要件:元の国籍を失うことができること
国によっては兵役を終えなければ国籍を離脱できない場合もあります。
⑥思想要件:政府を暴力で破壊することを企てるテロ組織などの団体に加入していないこと
⑦日本語の読み書きができること:小学3年生レベルの日本語(N4程度)の語学力を有すること
<必要書類>
帰化許可申請に必要となる主な書類は、次のとおりです。
必要書類は、外国人の国籍や身分関係、職業などによって異なりますので、申請に当たっては、法務局・地方法務局に確認をされることをお勧めします。
1 帰化許可申請書(外国人本人の写真)
2 親族の概要を記載した書類
3 帰化の動機書
4 履歴書
5 生計の概要を記載した書類
6 事業の概要を記載した書類
7 住民票の写し
8 国籍を証明する書類
9 親族関係を証明する書類
10 納税を証明する書類
11 収入を証明する書類
引用:法務省「国籍Q&A」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji78.html#a11
■簡易帰化
簡易帰化では特定の要件を満たすと普通帰化の要件の一部の要件が緩和されます。
必要書類は、普通帰化で求められるものと基本的には同様です。
【元日本国籍人の子供で引き続き3年以上日本に住所・居所がある人】
「元日本国籍人の子供」とは、外国に帰化した両親を持つ子供などをさします。
⇨緩和される要件:
住居要件が緩和されて、引き続き3年以上日本に住み続ければ帰化することができます。
【日本で生まれ引き続き3年以上日本に住所・居所がある、またはその父・母が日本で生まれたもの】
該当例:日本で生まれた在日韓国人・朝鮮人の方など
⇨緩和される要件:
住居要件が緩和されて、引き続き3年以上日本に住み続ければ帰化することができます。
※未成年では帰化が許可されません。
【引き続き10年以上日本に居所する人】
⇨緩和される要件:
住居要件が緩和されて、3年以上の就労期間がない場合でも帰化できる可能性があります。
【日本人の配偶者があり、引き続き3年以上日本に住所・居所し、かつ、現に日本に住所を有するもの】
日本人と結婚していて、3年以上日本に住んでいる方が対象になります。
⇨緩和される要件:
・住居要件が緩和されて、引き続き3年以上日本に住み続ければ帰化することができます。
・配偶者の収入だけで生計が立てられる場合、就労期間も不要となる場合があります。
【日本人の配偶者との結婚から3年を経過し、かつ、引き続き1年以上日本に住所がある人】
⇨緩和される要件:
・住所要件と能力要件が緩和され、日本の居住期間が5年未満でも、18歳未満であってもその他の要件を満たしていれば申請することが可能です。
・収入要件についても、配偶者の収入だけで生計が立てられる場合、就労期間も不要となる場合があります。
【日本人の子で日本に住所がある人】
両親だけが先に帰化し日本人になった後に、その子供が帰化するような場合が想定されます。
⇨緩和される要件:
住所要件、能力要件、生計要件が緩和され、日本の居住期間が5年未満で、18歳未満で、収入が十分になかったとしてもその他の要件を満たしていれば申請することが可能です。
【日本人の養子で引き続き1年以上日本に住所があり、かつ、縁組の時に未成年だった人】
⇨緩和される要件:
住所要件、能力要件、生計要件が緩和され、日本の居住期間が5年未満で、18歳未満で、収入が十分になかったとしてもその他の要件を満たしていれば申請することが可能です。
【日本国籍を失った人で日本に住所がある人】
該当例:外国人との結婚をきっかけに相手の国の国籍を取得し日本国籍を喪失したが、その後離婚し再度日本国籍を取得したい場合
⇨緩和される要件:
住所要件、能力要件、生計要件が緩和され、日本の居住期間が5年未満で、18歳未満で、収入が十分になかったとしてもその他の要件を満たしていれば申請することが可能です。
【日本で生まれ、かつ、出生の時から無国籍の人で引き続き3年以上日本に住所がある人】
該当例:日本(血統主義)で生まれたアメリカ人(出生地主義)同士の子供で引き続き3年以上に日本に住んでいる場合
※日本は、両親のどちらかが日本国籍であればその子供は日本国籍を取得することができるという血統主義をとっています。
※アメリカでは、血統に関わらず、アメリカの領土内で生まれた子供であればアメリカ国籍を取得することができるという出生地主義をとっています。
⇨緩和される要件:
住所要件、能力要件、生計要件が緩和され、日本の居住期間が5年未満で、18歳未満で、収入が十分になかったとしてもその他の要件を満たしていれば申請することが可能です。
■大帰化
法務大臣が申請し、国会が承認することで行われる大帰化では、普通帰化の7つ全ての要件が免除されます。
普通帰化・簡易帰化の申請の流れ
帰化の申請にかかる期間は、一般的におよそ1年ほどです。
申請書類を法務省に提出すると、そこから2~3ヶ月後に法務局や担当との面接が行われます。
提出書類・面接の内容を踏まえ、およそ8ヶ月〜1年後には、許可不許可の結果が通知されます。
帰化が不許可・できない原因とは
帰化申請は、永住申請と同様に難易度が高い申請で、不許可となるケースが多くあります。
ここからは不許可となってしまう原因として多いものをいくつか紹介します。
申請時にしっかりと確認・対策をした上で申請をするようにしましょう。
・就労の期間が短い
住居要件の中には、就労期間が3年以上あることが求められていますが、この要件が足りていないケースが多いです。
例えば、日本の四年制大学と大学院を卒業した場合、4年+2年=6年日本に滞在していることになりますが、この場合も就労期間がないため居住要件を満たしていないことになります。
・所得税や住民税等の納税が完納されていない
素行要件として、税金をきちんと全て納付していることが必要です。
仮に、滞納している税金がある場合には、事前に税務署に確認し納付しましょう。
帰化とは まとめ
外国人が帰化することで企業が得られるメリットは多岐にわたります。
企業は、在留期間の更新や採用に関わる諸手続きなしで、優秀なグローバルな人材を長期的に確保することができ国際ビジネスにおけるスキルを期待できます。
一方で、帰化には時間と複雑な手続きが伴います。
これから帰化を目指す外国人にとっては、企業からの適切なサポートが欠かせません。
帰化について正しく理解し、グローバル人材の採用・育成時には、帰化の支援や帰化した人材の活用も検討してみましょう。
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