特定技能が退職! 届出や書類、手続きについて解説!
2023年07月22日
雇用した特定技能外国人が何らかの理由で退職することになった場合、受入先である特定技能所属機関はまず入管(出入国在留管理局)への届出が必要となります。
この届出書の提出を怠ると、入管法 第71条の4第1号 に定められているように、刑事罰(30万円以下の罰金)の対象になります。
また、特定技能受入の欠格事由として、以後、特定技能外国人の受入れができないこともあります。
この他に、ハローワークへの届出も必要です。また特定技能所属機関でなく特定技能外国人自身が行わなければならない手続きもあります。
こういった退職時の届出について理解できるよう解説します。
この記事でわかることは次のとおりです。
-入管への届出「受入れ困難に係る届出書」と「特定技能雇用契約の終了又は締結に係る届出書」
-ハローワークへの届出
-特定技能外国人本人による入管への届出「契約機関に関する届出」
-退職後に別の会社で働く場合のビザの変更申請
なお、特定技能2号は、熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格であり、ここでは、よりハードルが低く数も多い特定技能1号を念頭にお話します。
特定技能が退職した際の入管への届出
雇用していた特定技能外国人が退職となった場合、まず入管に対して、次の2種類の届出を提出します。
・参考様式第3-4号 受入れ困難に係る届出書
・参考様式第3-1-2号 特定技能雇用契約の終了又は締結に係る届出書
各々の書類について、詳しく解説します。
参考様式第3-4号 受入れ困難に係る届出書について
https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/nyuukokukanri07_00190.html
(出典 出入国在留管理局 特定技能所属機関による受入れ困難に係る届出 参考様式第3-4号)
受入れ困難に係る届出書の提出期限と提出先は、以下のとおりです。
提出期限:「受入れ困難の事由が発生した日」から14日以内
提出先:特定技能所属機関の住所を管轄する地方出入国在留管理局
注意点は、「受入れ困難の事由が発生した日」は「退職した日」ではないということです。「退職することが決まった日(わかった日)」が事由発生日となります。
受入れ困難事由とは
受入れ困難事由の例は、次のようなものが該当します。
-経営上の理由により解雇の予告をしたとき
-特定技能所属機関が基準不適合となったとき
-法人の解散の意思決定がなされたとき
-重責解雇(労働者の責めに帰すべき事由によるもの)となるような事由が判明したとき
-自己都合退職の申し出があったとき
-「特定技能」以外の在留資格へ変更申請をしたとき(引き続き雇用する場合を含む
-特定技能外国人の病気・怪我により雇用の継続が困難になったとき
-特定技能外国人が行方不明になったとき
-個人事業主・特定技能外国人が死亡したとき
通常、退職希望日の数週間から1ヶ月以上前に退職の申し入れをします。そのため申し入れ日が7月1日で、実際の退職日が7月31日といったことはごく普通です。
この場合、「参考様式第3-4号 受入れ困難に係る届出書」は、申入れ日である1日から起算し14日以内ですので14日までに提出する義務があります。
参考様式第3-1-2号特定技能雇用契約の終了又は締結に係る届出書
https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/nyuukokukanri07_00187.html
(出典 出入国在留管理局 特定技能雇用契約の終了又は締結に係る届出 参考様式第3-1-2号)
「受け入れ困難に係る届出書」は退職決定日から14日以内に提出しなければなりませんでしたが、こちらの「特定技能雇用契約の終了又は締結に係る届出書」は、「雇用契約が終了した日」から14日以内の提出となっています。
即日解雇であれば「退職することが決定した日」と「雇用契約が終了した日」は同じです。
しかし自己都合による退職などであれば、一般的には「退職することが決定した日」と「雇用契約が終了した日」が別になります。
先ほどの例をもう一度取り上げると、退職申し出が1日で、退職日が31日であれば、31日が「雇用契約が終了した日」となります。
ですから「特定技能雇用契約の終了又は締結に係る届出書」の提出期限は、7月31日から起算して14日以内=8月13日になり、「受け入れ困難に係る届出書」と「特定技能雇用契約の終了又は締結に係る届出書」の提出は日程がずれるのが普通です。
しかし、退職事由発生日と退職日が同日になるケースでは、「受け入れ困難に係る届出書」と「特定技能雇用契約の終了又は締結に係る届出」を同時に提出することになるでしょう。
支援委託契約の終了又は締結に係る届出書について
https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/nyuukokukanri07_00189.html
(出典 出入国在留管理局 支援委託契約の終了又は締結に係る届出書)
特別技能外国人が退職した際、上記の2つの届出に加えて、参考様式第3-3-2「支援委託契約の終了又は締結に係る届出書」の提出が必要かどうかについても、解説します。
-退職した外国人の支援を登録支援機関に委託していない場合:「支援委託契約の終了又は締結に係る届出書」の提出は不要。
-登録支援機関に支援を委託している場合で、退職者以外に支援を委託している者がいない場合:その者が退職すれば、登録支援機関との支援委託契約は全部終了することになりますので、「支援委託契約の終了又は締結に係る届出書」を提出する必要があります。
-退職した1号特定技能外国人以外に支援委託をしている者がいて、他の者の支援委託が継続する場合:「支援委託契約の終了又は締結に係る届出書」を提出する必要はありません。
-「特定技能雇用契約の終了に係る届出書」を提出し、同届出書に登録支援機関との支援委託契約が終了した旨を記載した場合:「支援委託契約の終了又は締結に係る届出書」を提出する必要はありません。
「支援委託契約の終了又は締結に係る届出書」は、あくまでも登録支援機関に支援を委託している場合に提出が必要な届出です。
「受け入れ困難に係る届出書」や「特定技能雇用契約の終了又は締結に係る届出書」を提出しなかった場合の罰則
30万円以下の罰金が課せられる可能性があります。
また特定技能所属機関としての義務を果たさなかったため欠格事由に該当し、以後の特定技能外国人の受入れができなくなる場合があります。
必ず欠格事由に該当するというわけではなく、うっかり忘れていたといった場合は、入管の判断により、別途、遅延に関する書式を提出することで罰則を免れます。
しかし、必ず悪質性が無いと認められる保証はありません。
届出書は必ず提出しましょう。
特定技能が退職した際のハローワークへの届出について
入管以外にも、ハローワークへの届出が必要です。
特定技能外国人が雇用保険の被保険者である場合とない場合で、異なるので、詳しく説明します。
特定技能外国人が雇用保険の被保険者でない場合
届出の種類: 離職に係る外国人雇用状況届出書
提出先:当該外国人が勤務する事業所施設の住所を管轄するハローワーク
提出期限:離職した翌月の末日まで
特定技能外国人が雇用保険の被保険者である場合
届出の種類: 雇用保険被保険者資格喪失届
提出先:雇用保険の適用を受けている事業所を管轄するハローワーク
提出期限:離職した翌日から起算して10日以内
特定技能本人が退職の際に行う届出
「受入れ困難に係る届出書」と「特定技能雇用契約の終了又は締結に係る届出書」は特定技能所属機関が提出する届出ですが、別途、特定技能外国人本人が入管に提出すべき届出があります。
それが、「所属機関に関する届出(参考様式1-4 契約の終了)」です。
https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/nyuukokukanri10_00015.html
(出典 出入国在留管理局 所属機関に関する届出(参考様式1-4 契約の終了))
所属機関との契約が終了した日から14日以内に、特定技能外国人本人が入管に提出しなければいけません。
この届出を怠ると、その後のビザの変更申請などが認められないことがあります。
特定技能の退職手続きにおいて、特殊なケースについて
上記で説明したルールに従って届出を行うのですが、多種多様な退職理由があるため、判断に迷うケースもあるでしょう。
特殊なケースについて、いくつかわかりやすく解説します。
特定技能外国人が失踪(行方不明)になった場合
失踪、無断退職、死亡などの場合、退職の申し出はされません。
そのため退職日も明確でありません。
このような場合は、失踪したことが判明した日や連絡が取れなくなった日、または所属機関が退職日と定めた日などを、退職日とします。
一時帰国のために退職した場合
1号特定技能外国人が休暇等を利用して一時帰国する際に、一旦雇用契約を終了し退職するケースがあります。
このようなケースでは、雇用契約ではなく支援委託契約を終了したかどうかに着目します。
支援委託契約を終了した場合は、一時帰国でも、「支援委託契約の終了又は締結に係る届出書」の提出が必要です。
一方、支援委託契約を終了せず継続したまま一時帰国するのであれば、「支援委託契約の終了又は締結に係る届出書」の提出は不要です。
特定技能が退職した後の転職について
企業側の都合で特定技能外国人の受け入れが継続できなくなることもあります。
経営上の理由や、欠格事由にあたり特定技能の受け入れが出来なくなったケースなどが該当します。
この場合、ただ特定技能外国人を退職させるのではなく、特定技能外国人本人が特定技能としての就労継続したいという意思があれば、転職(再就職)に向けて支援を行うことが求められています。
勤務先(特定技能所属機関)が変わった場合、「在留資格変更許可申請」を行う必要があります。
特定技能ビザは、「指定書」上で、勤務する会社(特定技能所属機関)が指定されているためです。
在留資格変更許可申請の手続きの手間だけでなく、申請中にはアルバイトも含め働けないなど、外国人には制約があり転職が難しいのが実情です。
だからこそ、受入機関のサポートと迅速な手続きが大切です。
特定技能が退職! 届出や書類、手続き まとめ
この記事では、特定技能外国人が退職した際に必要な手続きや届出について解説しました。
特定技能外国人が退職したら、次の手続きを忘れないようにしましょう。
-入管(出入国在留管理局)に届け出。
-ハローワークに届け出。
-特定技能外国人本人が、入管に届け出。
-転職する場合は、ビザの変更申請。
いずれも随時届出となっており、期限がありますので注意しましょう。
届出が遅れたり、忘れていたからといって、即、罰せられるわけではありませんが、法律で罰金や特定技能外国人受入機関欠格事由として罰則が定められていることも事実です。
きちんと手続きを行い、法を守った特定技能外国人受け入れを行いましょう。
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